まずはココから始めよう!リアルタイムPCRの概要と実験に必要な構成要素まとめ

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リアルタイムPCR(qPCR)は、PCRで増えた産物を“後から”確認するのではなく、増幅の過程を蛍光シグナルとしてリアルタイムにモニタリングし、定量できる手法です。遺伝子発現解析や病原体検出、NGSデータの確認、バイオ医薬品開発のQCなど、研究から応用まで幅広く使われています。

Thermo Fisher Scientific では、QuantStudio™ リアルタイムPCRシステムや Applied Biosystems™ TaqMan™ アッセイなど、qPCRに必要な装置や試薬を幅広く提供しています。

この記事では、初心者がまず迷わないために、qPCRの仕組み、実験系を立ち上げるにあたって考慮するべき点や注意点を、基本からやさしく解説します。

リアルタイムPCRとは:PCRを“見ながら”定量する

エンドポイントPCRは、増幅が終わった後にゲル電気泳動などで産物を確認するのが一般的でした。一方、qPCRでは反応中に蛍光を測定し、サイクルごとの蛍光値を記録し、解析します。

qPCRの解析で登場するのが Ct値 です。Ct(Cycle threshold)値とは、蛍光シグナルが設定した閾値(Threshold)を超えたサイクル数を指します(図1)。初期鋳型量が多いほど閾値到達が早くなり、Ct値は小さくなります。図1の例では、サンプルAの方がサンプルBと比較して初期鋳型量が多いことが分かります。qPCRでは、絶対定量やΔΔCt法など複数の解析手法がありますが、いずれもCt値を基準にデータを解析します。なお、装置や解析ソフトによってCt値の算出方法や解析設定が異なる場合があります。比較する際は、同じ条件・同じ解析設定で評価することが重要です。

図1.リアルタイムPCRにおけるCt(Cycle threshold)値とは

蛍光でどう測る?代表的な2つの検出ケミストリー

qPCRでは、PCR増幅を「蛍光シグナルの増加」として検出します。現在広く使われている検出ケミストリーは大きく2系統に分かれます。どちらの手法でも定量は可能ですが、特異性・設計の手間・運用のしやすさが異なります。

1)二本鎖DNA結合色素法(例:SYBR™ Green)

SYBR™ Green のような二本鎖DNA結合色素が、二本鎖DNA(dsDNA)に結合したとき蛍光を発するという性質を利用する方法です。PCR産物が増えるほどdsDNA量が増え、それに比例して蛍光シグナルが強くなります。

反応系としては、プライマーとマスターミックスがあれば構築できるためシンプルです。ただし、この方法では二本鎖DNAであれば、非特異的増幅産物やプライマーダイマーも検出されるため、プライマー設計と検証が重要です。実験後には必ず解離曲線(Melt curve)解析を行い、単一ピークであることを確認します。複数ピークが見られる場合は、非特異産物が混在している可能性がありますので、条件の最適化やプライマーの再設計を行います。

2)配列特異的プローブ法(例:TaqMan™ Assay)

TaqMan™アッセイは、配列特異的プローブを用いる検出法です。プローブはレポーター色素とクエンチャーを両端に持ち、増幅前はクエンチャーにより蛍光が抑えられています。PCR伸長反応中、DNAポリメラーゼがプローブに到達すると、ポリメラーゼが持つ5‘→3′エキソヌクレアーゼ活性によりプローブが分解されます。これによりレポーターとクエンチャーが分離し、蛍光が検出されるようになります。プローブがターゲット配列に結合していなければ蛍光は生じないことから、SYBR™ Greenなどよりも特異性が高い方法です。

設計済みの TaqMan™ Gene Expression Assay や TaqMan™ SNP Genotyping Assay などを利用すれば、プライマー・プローブ設計や最適化の手間を大きく削減できます。特に初心者や、再現性を重視する実験では大きな利点になります。

どちらを選ぶべきか?

最終的な選択は、「何を重視するか」によって決まります。

  • 特異性・再現性・マルチプレックス対応を重視するなら TaqMan™
  • 単一ターゲットをシンプルに測るなら SYBR™

初心者の場合、「試薬が少なそうだからSYBR」という理由だけで選ぶと、プライマー検証に時間を取られることがあります。アッセイ設計の手間まで含めて考えると、トータルではプローブ法の方がスムーズに立ち上がるケースも少なくありません。

逆転写のステップ:1-Step と 2-Step RT-qPCRの考え方

RNAを定量する場合は、まず逆転写(Reverse Transcription:RT)でcDNAを作ってからqPCRを行います。RTとqPCRを別々に実施する2-Step RT-qPCRとRTとqPCRを連続的に行う1-Step RT-qPCRがあります。
2-Step RT-qPCR は、最初にRTでcDNAを作り、別反応でqPCRします。cDNAを保存しておけるため、複数ターゲットに展開しやすく、柔軟性が高いのが利点です。

1-Step RT-qPCR は、RTとqPCRを同一チューブで連続して行うため、セットアップが簡単で取り扱いに伴うコンタミリスクを減らしやすいのが利点です。

目的や運用スタイルに合わせて選択します。

Master Mixとは?qPCR反応に必要な試薬のミクスチャー

qPCRでは、プライマーやテンプレート以外にも、増幅反応に必要な複数の成分が必要になります。それらをあらかじめ最適な比率で混合したものが、qPCR Master Mixです。Master Mix には一般的に、次のような成分が含まれています。

  • 耐熱性DNAポリメラーゼ
  • dNTP
  • Mg²⁺(マグネシウムイオン)
  • 反応バッファー

これらはPCRが正しく進行するために不可欠な構成要素です。たとえば、DNAポリメラーゼは新しいDNAを合成する酵素であり、dNTPはその材料となります。Mg²⁺はポリメラーゼ活性に必須の補因子であり、濃度が不適切だと増幅効率や特異性に影響します。以前は各成分を個別に混合する必要がありましたが、現在では 最適化済みのMaster Mixを使用するのが一般的です。Thermo Fisher Scientific でも、SYBR™ Green 用や TaqMan™ 用など、用途に応じた 多様なqPCR Master Mix を提供しています。Master Mixを使うメリットには、成分バランスが最適化されているため再現性が高い、ピペッティング操作が減りヒューマンエラーやコンタミリスクを低減できるというものがあります。

プライマー・プローブ設計

qPCRでつまずきやすいのがプライマー設計です。

設計のポイントがいくつかあります。アンプリコンは短め(目安 50–150 bp 程度)にし、プライマーは18–24 nt程度、プライマー同士のTm値は近づけます。プライマーダイマーや自己相補性を避け、SYBR™ Green運用では特に、解離曲線で単一産物を確認することが重要です。また、RT-qPCRでmRNAを対象にする場合は、可能ならエクソン–エクソン境界をまたぐ設計でゲノムDNA由来増幅を抑えます。

使いやすいオンライン/ツール例(具体例)
  • Thermo Fisher:Primer Express™ / Primer Designer(Applied Biosystems™系の設計ツール)
  • NCBI Primer-BLAST(設計+オフターゲット確認を一体で実施)
  • Primer3(汎用・自由度の高い設計ツール)

設計が難しいと感じる方には、設計済みの既製品TaqMan Assayがおすすめです。Applied Biosystems™ TaqMan™ Assay 製品はリアルタイムPCRのプライマーおよびプローブとして、実証されたアルゴリズムを使用してデザインされ、世界中の研究者から信頼を得ています。

コントロール:最低限これだけは入れよう

qPCRは“測れたように見える”ことがある分、コントロールが重要です。まずは次の基本セットから始めましょう。

  • NTC(No Template Control):テンプレートを添加しない反応系です。試薬へのコンタミネーションやプライマーダイマーの検出に役立ちます。
  • NRT(No RT Control):逆転写酵素を添加せずに逆転写反応を行ったサンプルです。RT-qPCRでゲノムDNA混入を確認したいときに測定します。

必要に応じて検量線サンプル(Standard curve):絶対定量やPCRの増幅効率評価に使用します。

適切な実験テクニック

適切な実験テクニックの重要性を過小評価してはなりません。テンプレートの調製からPCR後の解析に至る反応の各ステップで、専用の実験器具および溶液を使用することが最善です。フィルターチップおよびスクリュー式のキャップのチューブを使用することにより、コンタミを低減することが可能です。qPCRは高感度な実験のため、コンタミネーションには特に注意します。

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